アルテリオス計算式概論
この記事はWWA Advent Calendar 2023の7日目です。
概要
アルテリオス計算式とは、「攻撃側の攻撃力-防御側の防御力=与ダメージ」というダメージ計算式のことです。
WWAではコマンドバトルなど特殊なシステムを組まない限り、このシンプル極まりないシステムで同じように殴り合い続けることになります。
WWA FanSquareのDiscordコミュニティでは「#ダンジョンwwa」チャンネルの概要が「アルテリオス計算式の真を求め続けるダンジョン攻略チャンネル」となっており、WWA界隈においてはこの呼称が定番と言っていいでしょう。
さて、アルテリオス計算式は巷では扱いが難しい計算式として名を馳せています。
実際にありそうなケースを見てみましょう。
- 敵のHPが100だと仮定する
- プレイヤーの攻撃力が敵の防御力を下回っている場合、攻撃が全く通らないので戦闘が成立しない
- プレイヤーの攻撃力が敵の防御力を1だけ上回った場合の必要ターン数は100回。攻撃が通るようになったというだけでまあ無理ゲー
- そこからプレイヤーのステータスが更に1成長した場合は100→50回と急激に減る
- この頃は攻撃力1の価値が滅茶苦茶高い
- そこからプレイヤーの攻撃力が1ずつ成長していくとそれに応じてどんどんターン数は減っていくが減り方はどんどん緩くなる
- 今回の例であればステータスの差が10→11になるよう成長したとき、ターン数が減らない状態が初めて発生する
- このあたりがいわゆる適正ステータス帯(レベル帯)といった趣になる
- このあたりになると攻撃1の価値は極端に低下する
- とはいえ、頑張って攻撃力を上げてステータスの差が100に到達すればワンパンが可能にはなる
- プレイヤーの攻撃力が成長していくのであれば、当然のことながら防御力も成長していく
- 必要ターン数が多いうちは防御力が1上がっただけで攻撃回数分のダメージが減らせるので、防御力1の価値が滅茶苦茶高い
- 必要ターン数が減っていっても確実にダメージは1は減るため完全に腐ることはない
- 攻撃と防御を均等に上げていく場合、敵にプレイヤーの攻撃が通るようになる前に敵の攻撃がプレイヤーに通らなくなる可能性すら発生しうる
攻撃に伴って防御も同量ずつ上げていくような形にすると、適正ステータス帯が滅茶苦茶狭くなります。
一般的なRPGではキャラごとに多少の差は出るとはいえ、HP以外のステータスはおおよそ均等に上がっていくのがほとんどですからバランス調整が難しくなるわけです。
アルテリオスとは?
「アルテリオス計算式」というのはなんか仰々しい名前ですが、これはファミコンで発売されたシューティングRPG、「アルテリオス」に由来します。
今回の企画の趣旨からは完全に外れるんですが、少しアルテリオスの話もしましょう。
アルテリオスにも「攻撃側の攻撃力-防御側の防御力=与ダメージ」というダメージ計算式が採用されていたんですが、これが悪さしかしていなかったことから反面教師として名を残しています。
というかこのゲーム、アルテリオス計算式の難しさ云々の前にバランス調整というものを放棄しています。
- 最初のキャラクターメイクで攻撃極振りしても11なのに、一番弱い敵の防御力が17
- レベルアップ時の能力上昇値が指数関数的に増えていく
- レベル上限は31
- 経験値162の敵と36の敵が同じマップに出現する(敵は1体ずつしか出てこないのにこの落差)
せめてバランス調整をしたという態度を見せやがれ。
一応、ゲーム終盤ほどステータスアップの価値が薄くなるのをなんとかしようとしたフシが2番目から見て取れます。
でも、最高値のレベル31になってラストダンジョンでようやくまともに戦えるステータスになるっぽいので道中のバランス崩壊を加速させただけのような……
こんなクソみたいな開発者のやることなので、アルテリオス計算式を採用した理由も「ただの手抜き」という推測が一般的です。
その一方で、アルテリオスはこんな側面も持ちます。
- 戦闘システムがシューティングであり敵の攻撃を全部避けきることが可能
- 敵の行動パターン(移動パターン・攻撃タイミング)が種別ごとに完全固定のため、パターンを覚えれば全避けも十分視野に入る
- 自分の攻撃力が敵の防御力を下回っていても1ダメージは保証される
これらの点からプレイスキルさえあればクリアまで持っていけてしまいます。
なので辛うじてゲームとして破綻していない……というのがアルテリオスのなんとも言い難い部分です。
破綻していないだけで楽しくはないです。
- シューティングゲームと割り切った場合、自分の実力が上がるとRPG要素のせいで敵をワンパンできるようになってしまいその知識と経験を振るえる相手が居なくなる
- RPGと思ってプレイしようにも、シューティングがクリアできなければレベルが上げられない
これらのようにRPGとシューティングの要素それぞれが見事に足を引っ張り合っていることにより、アルテリオスはクソゲーという評価を恣にしています。
RPGとシューティングをかけ合わせる発想自体は悪く無さそうという声もありますが、上述したような世紀末バランスを許容するような開発者の下でそのポテンシャルを活かし切れるはずもなく……
アルテリオス計算式のパッと見の単純さは、そんな開発者のテキトーっぷりを何より雄弁に物語っていると言えるでしょう。
同じような思考の開発者が多いので、「アルテリオス計算式はクソゲーの華」みたいに言われることがしばしばあります。
もちろんアルテリオス計算式を採用した名作RPGもありますし、アルテリオス計算式を採用してないクソRPGもありますが、言わんとすることは理解できるのではないでしょうか。
WWAにおけるアルテリオス計算式
ここまでアルテリオスについて長々と語ってきましたが、ここでWWAに話を戻します。
アルテリオス計算式についての既存の考察って、レベル上げによっておおよそ均等に能力値が上昇していくRPGを前提としているのでそのままWWAに適用することができないんですよ。
WWAとRPGの主な違いはおおよそ以下の3つ。
- マップ上のリソースが有限である作品が大半で、進行度とステータスは誰がプレイしてもおおよそ同じくらいに収まる
- 同じ種類の敵と戦う回数も有限で、ダンジョンWWAであれば20回もあれば多い方
- プレイヤーの攻撃や防御はどんどん上がっていくが、最大HPを上げる機会はほとんどない(あるいは青天井なので考慮から外して良い)
これらを踏まえた上でアルテリオス計算式でバランスをとるにはどのように調整すれば良いか、いくつか案を挙げてみましょう。
防御力をほぼ0にしてHPの増減だけで調整する
これもうアルテリオス計算式である必要なくない?
攻撃と防御とHPの3要素のバランスを取るのが難しいのなら、2要素に絞ってしまえば楽という話。
WWAの場合は右側に常にプレイヤーのステータスが表示されるので、0のままの守備力が晒され続けてどこか哀愁を放ちます。
ステータスを二桁以下にデフレさせる
アルテリオス計算式のデメリットを解消する方法として、最も有名な方法です。
冒頭の例だとHPが100だったので攻撃力が1上がるだけで必要ターン数が100回から50回までガクっと減ったわけですが、HPが10だったらどうでしょう?
10回→5回なので1/2ではあるんですけど、100回→50回ほどの落差とは感じないと思います。
そもそも必要ターン数が10回でも「まあ頑張れば倒せそうだな」って感じがありますもんね。そういうことです。
この考え方と防御力ほぼ0をベースにforestは作られています。
本当はもっとマップを大きくしたかったんですが、たった4画面なのに既に相当インフレが進んでしまって断念したという経緯が実はあったりします。
この考え方をもっと厳密に適用するなら、「ステータスアップアイテムはほぼ設置せずに極力HPだけでやりくりする」みたいな感じになるんでしょうか。
少なくともforestはステータスアップアイテムを置きすぎたというのは間違いないです。最終的に能力値3倍くらいになるしね。
「HP*2/想定ターン数=攻撃力=防御力*2」を基準として調整する
ドラゴンクエストで用いられている「攻撃側の攻撃力/2-防御側の防御力/4=与ダメージ」をアルテリオス計算式に落とし込む調整方法です。
上述のドラクエ式の良いところは攻撃と防御を同じ値になるように調整すると勝手にバランスがとれるという点です。
- HP・攻撃・防御が100のときは1ターンあたりのダメージが
100/2-100/4=50-25=25で必要ターン数は100/25=4 - HP・攻撃・防御が200のときは1ターンあたりのダメージが
200/2-200/4=100-50=50で必要ターン数は200/50=4 - HP・攻撃・防御が300のときは1ターンあたりのダメージが
300/2-300/4=150-75=75で必要ターン数は300/75=4 - HPが150、攻撃・防御が100のときは1ターンあたりのダメージが
100/2-100/4=50-25=25で必要ターン数は150/25=6 - HPが300、攻撃・防御が200のときは1ターンあたりのダメージが
200/2-200/4=100-50=50で必要ターン数は300/50=6
これをアルテリオス計算式でなんとか再現しようとした結果が「HP*2/想定ターン数=攻撃力=防御力*2」となります。
上のリストの強調部分の値だけ引っこ抜いた感じですね。
バランスはとりやすいんですが、「HP300攻撃150防御力75」という感じでまあまあ見栄えが悪くなるのが欠点です。
敵を倒すとステータスアップアイテム落とすようなダンジョンを作った場合、ドロップ率の差が大きいと違和感が出やすくもなるでしょう。
「HP*2/想定ターン数=攻撃力=防御力*1.2」を基準として調整する
大蛇の洞窟:レトロはこれとドラクエ式を織り交ぜて調整しています。
ドラクエ式よりは攻撃と防御が均等に近づく調整方法になります。
とにかく「攻撃力>防御力」は絶対に維持するという固い意志を持ちましょう。
敵のHPをバカでかくする
ゲーム内でプレイヤーのステータスが取りうる範囲全てを適正ステータス帯に収めさせることができます。
大蛇の洞窟:レトロのボスはこの発想で調整しました。
これでプレイヤーがどんな能力値に仕上げてきても安心ですね。
ボス以外でこの調整方法使うと雑魚だろうが必要ターン数が100を超える凄ぇゲームになるけどな!
いくらWWAではある程度のターンが経過すると1ターンに要する時間が減るとはいえど、それはちょっとね……
おわり
一つのゲームで一つの調整方法しか使っていけないということはないので、それぞれの要素の良いところを取り入れていきましょう。
書いているうちに何が言いたいかよくわかんなくなってきたのでひとまずここで終わりにします。
頑張っていい感じのダンジョンWWAを作ろう。